自動車保険の等級や運転者年齢による割引率やその制度について
投稿日:2017年11月3日
個人向けの自動車保険の記事について書かせていただくようになって今回でシリーズ5回目となりました。今回は自動車保険料に多いに影響する自動車等級別料率制度について詳しくお話させていただければと思います。これまでの記事でも何度か事故をして保険を使用した場合は、次年度の保険料が高くなります、とお話をさせていただいたと思いますが、この等級別料率制度は保険料を決める上で大変、影響が大きいため基本的な部分からそして具体例もまじえて詳しくお話できたらと思います。等級別料率制度について詳しくお話させていただく前に、まず保険料が決定される要素について少し説明させていただきます。これまで書かせていただいた記事でもお話させていただきましたように、自動車保険料は補償内容、運転者の範囲、契約の自動車の用途車種、使用目的やゴールド免許割引や新車割引などの各種割引で主に決定されますがその他、次のような要素も影響します。
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主たる運転者ごとに保険料が変わる!記名被保険者年齢別料率とは
通常、各保険会社では記名被保険者の年齢に応じた料率区分が適用されます。保険年度ごとの保険期間初日における記名被保険者の年齢に基づき料率区分が適用されます。
契約者ではなく記名被保険者によって料率区分が適用されるのがポイントです。車を運転し始めた若い方や高齢者の方が記名被保険者の場合、一般に事故が少ないと言われている30代~50代に比べるとこの年齢別料率が高くなります。
特に近年では、高齢化者の方の事故も増えているため、高齢者の方が記名被保険者の場合、この年齢別料率が高くなっている傾向にあります。
69歳の契約者の方がこれまで事故もなく等級も長い間、20等級であったにも係わらず70歳になった途端、保険料があがるのはなぜ?と思われましたらこの料率が影響されていると思ってください。
自動車の型式ごとで保険料が変わる!型式別料率制度とは
自家用乗用車(普通・小型)の保険料体系は、車両・対人賠償・対物賠償・傷害の補償内容ごとの「型式別料率クラス制度(1~9クラス)」により細分化されていて自動車の型式ごとの事故の実績を反映されて決定されています。
この自動車の型式はアルファベットや数字の組み合わせでできており、自動車保険契約をする際に必ず登録する事項になります。車検証に記載されていますのでご自分のお車の型式を一度、確認してみてください。
この料率クラスは過去の事故の実績により損害保険料率算出機構が決定し、毎年見直しがされています。
損害保険料率算出機構 HOME
皆さまに寄り添い、安心を届ける損害保険。 保険料率算出や 自賠責損害調査などを通じて、 損害保険を支えているのが 損害保険料率算出機構です。
お客さま自身は事故をしていない、保険を使用していないにも係わらず、補償内容が前年と同一の場合でももしこの料率クラスが上がると、保険料は前年より高くなることがあります。
それでは次にいよいよ今回の記事のメインテーマであり、保険料を主に決定する要素である「ノンフリート等級別料率制度」についてお話していきます!
自動車保険は6等級から開始!ノンフリート等級別料率制度とは
この制度は過去の自動車事故により保険使用歴などに応じてお客さまごとに等級および事故有係数適用期間が設定され、それにより保険料が割引または割増となります。
前回の記事で少しお話させていただきましたがノンフリート契約者という用語を覚えていらっしゃいますか?
所有・使用する自動車の総契約台数が9台以下の場合をノンフリート契約者といい、ノンフリート契約者には1等級~20等級の区分(全労済は22等級まで)、事故有係数適用期間により保険料が割引・割増される等級別料率制度が採用されています。
ちなみに10台以上はフリート契約者と呼ばれ、その場合はこの等級別料率制度は適用されずフリート特有の割引が適用されます。バイク、原付も含めて10台以上いけばフリートにする必要性があります。これは、また今度にしましょう。
事故有係数適用期間について
さて、「事故有係数適用期間」ちょっと耳慣れない用語がでてきましたね。この「事故有係数適用期間」が等級区分にプラスされて適用されるようになったのは実は数年前(5,6年前?位だったと思います)からです。
「事故有係数適用期間」というのは、事故があった場合(カウント事故で保険を使用した場合)に「事故有」の割増引率を適用する期間を示すものとして保険契約ごとに設定されます。
事故有係数適用期間が0年の場合は「無事故」の割増率、事故有係数適用期間が1年~6年の場合は「事故有」の割増引率が適用されます。
ということなのですが、何だか少し分かりにくいですね。
簡単に言いますと、同じ等級でも事故があった場合(カウント事故で保険を使用した場合)は事故有係数適用期間が適用されるため保険料が高くなるということです。
例えば、14等級(事故有係数適用期間0年)に比べると14等級(事故有係数適用期間3年)のほうが保険料は高くなります。
同じ等級にも係わらず事故があった人とそうでない人と保険料に差がないのは不公平感があるということでこの「事故有係数」が適用されるようになりました。一度、ご自分の掛けてらっしゃる自動車保険の証券を確認されてみるとよいと思います。
等級欄に20等級(事故有期間0)、17等級(事故有期間3)などと記載されていると思いますので。もし17等級(事故有期間3)とあれば同じ等級17等級(事故有期間0)と比較して保険料は高くなるということになります。
自動車保険の新規は6(S)等級から開始!
新たにご契約される場合にはこれも前回の記事でも少しお話しましたが6(S)等級(事故有期間0年)から運転者年齢条件に応じて割増引率が適用されます。この(S)は新規のSでしたね!
また、これも前回の記事でお話させていただきましたが、自家用8車種の自動車を11等級以上で契約されている方が、2台目以降の自動車(自家用8車種)を新たに契約になる場合で一定の条件で満たす時には7(S)等級(事故有期間0)からのスタートとなり、運転者年齢条件に応じた割増引率が適用されます。
これを複数所有新規割引(セカンドカー割引)と言いましたね。6(S)からと7(S)からのスタートでは保険料にかなりの差が出てきますので、家族でもう1台所有している車の自動車保険の等級が11等級以上かどうか確認してみましょう。
自動車保険の複数所有新規の割引適用条件
この割引を適用するには条件があります。新たに契約になる2台目以降の契約の記名被保険者・車両所有者のいずれも個人であり以下に該当することが条件となります。
車両所有者などが法人名であったりすると適用できませんのでご注意ください。
【記名被保険者】
- 1台目の契約の記名被保険者
- 1台目の契約の記名被保険者の配偶者
- 1台目の契約の記名被保険者またはその配偶者の同居の親族
【車両所有者】
- 1台目の契約の車両所有者
- 1台目の契約の記名被保険者
- 1台目の契約の記名被保険者の配偶者
- 1台目の契約の記名被保険者またはその配偶者の同居の親族
自動車を2台以上お持ちの場合は、車両入替の手続き時に一工夫を!
ここで知っておくとお得な情報を!
1台目のお車が11等級~20等級の自動車保険を契約いただいている場合は新しく取得した自動車と車両入替をすることで保険料がお得になることがあります。
特に新たに取得した自動車を運転する方が若い方の場合は年齢条件などの関係もありこの車両入替をされたほうが家族全体で考えますと安くなることが多いです。それでは具体例をお話します。
<車両入替時に保険料を安くする具体例>
【1台目のお車】
20等級(事故有期間0年)、運転者年齢条件:35歳以上補償、記名被保険者:契約者
【新たに取得した2台目のお車】
7(S)等級(事故有期間0年)、運転者年齢条件:全年齢補償、記名被保険者:契約者の息子(同居)
この場合、2台目は20歳の息子さんが運転するため運転者年齢条件は全年齢補償を選択しないといけません。保険会社によっても料率は異なりますが全年齢補償であれば11%位の割増、35歳以上補償で40%割引とかなり保険料は変わってきます。
ですから、例えば6月1日に息子さんが車を取得されたとすると、6月1日付でお父さんのお車と息子さんが購入された車の車両入替の手続きをします。車両入替後は、
1台目を7(S)等級(事故有適用期間0)、運転者年齢条件35歳以上補償、記名被保険者:(お父さんである)契約者
2台目を20等級(事故有適用期間0)、運転者年齢条件全年齢補償、記名被保険者:契約者の息子さん(同居)
となりますので、家族全体で考えますと保険料は安くなります。このような車両入替を最適な車両入替といいます。
ただし、これはあくまでお車を新規取得した際に適用できます。もともと2台のお車をすでに所有していて、その車両間での車両入替はできませんのでご注意ください。
また、前述で申しました事故有係数適用期間が1年以上の場合は、等級の高い契約に車両入替をしても保険料がお得にならない場合がありますので、まずお車を新規取得した場合には取扱代理店もしくは保険会社に相談し最適な車両入替をしてもらうようにしましょう。
自動車保険の等級はどのようにして決定されるのか。そのルールについて
続きまして、継続して契約される場合(他社からの切替契約も含みます)の等級の決定方法についてお話したいと思います。
自動車保険の契約期間が1年の場合、契約期間中無事故(カウント事故で保険を使用していない)であれば、次年度の契約の等級は1等級上がります。保険金をお支払いする事故があった場合には、次年度の契約の等級は事故の内容や件数によって決定します。
保険金をお支払いする事故は次のとおり3種類ありますので、詳しくお話していきましょう。
【ノーカウント事故】・・・他に事故がなければ1等級上がります。
「ノーカウント事故」とは文字どおり事故の件数には数えない事故をいい以下の場合、保険金をお支払してもカウントはされず、等級は進行します。
- 人身傷害保険事故
- 搭乗者傷害事故
- ロードアシスタンス事故
- ファミリーバイク特約事故
- 弁護士費用特約事故
- 個人賠償責任特約事故
などが代表的なものです。その他、保険会社によってノーカウント事故のケースが異なることがありますので各社に確認してみてください。
このノーカウント事故はあくまで単独の場合、ノーカウント事故になりますので例えば人身傷害保険+対人賠償保険を使用した場合にはカウント事故になり等級が下がります。
【1等級ダウン事故】・・・事故1件につき1等級下がります。車両保険事故のケースで
以下のような場合は「1等級ダウン事故」となります。
- 火災または爆発
- 盗難
- 台風、竜巻、洪水または高潮
- 落書
- いたずらなど
- 飛来中または落下中の他物との衝突
が代表的なものです。特徴としては契約者に責任がほとんどないようなやむ得ない自然的な事故の場合、車両保険を使用したとしても1等級しかダウンしません。
ちなみに私が入社した頃はこのような事故の場合は等級据え置き(前年と等級が変わらず)でしたが、事故有係数適用期間が導入されるようになった頃から等級据え置きは廃止されすべて1等級ダウンへと変更となりました。
【3等級ダウン事故】・・・事故1件につき、3等級下がります。
1等級ダウン事故およびノーカウント事故に該当しない場合は「3等級ダウン事故」として取扱されます。こうして前契約の事故の有無・事故の種類に応じて割増引率が適用されます。
事故有係数適用期間が0年の場合は「無事故」の割増引率、1~6年の場合は「事故有」の割増引率が適用されます。ただし6年を上限とし、0年を下限とします。どんなに事故をしたとしても6年よりは「事故有適用期間」は増えないということです。
具体的に例を示したほうが分かりやすいと思いますので、何例か見てみましょう。
等級と事故有係数適用期間の例について(*1年契約の場合)
現在16等級で事故0件で自動車保険の更新を迎えた場合
現在16等級(事故有適用期間0年)
→ 継続契約は17等級(事故有適用期間0年)
現在16等級(事故有適用期間2年)で無事故の場合
→ 継続契約は17等級(事故有適用期間1年)
現在16等級で1年間に事故を1回起こして自動車保険の更新を迎えた場合
現在16等級(事故有適用期間0年)で1等級ダウン事故が1件発生
→ 継続契約は15等級(事故有適用期間1年)
現在16等級(事故有適用期間0年)で3等級ダウン事故が1件発生
→ 継続契約は13等級(事故有適用期間3年)
現在16等級(事故有適用期間0年)で3等級ダウン事故と1等級ダウン事故が1件発生
→ 継続契約は12等級(事故有適用期間4年)
となります。だいたいイメージはお分かりになったのではないかと思います。もっと分かりやすく3等級ダウン事故をした場合の4年後までの推移について以下のような例で説明しましょう。
現在20等級で1年間に事故を1回起こして自動車保険の更新を迎えた場合
現在20等級(事故有適用期間0)で3等級ダウン事故が1件起こった場合
- 1年後の継続契約:17等級(事故有適用期間3年)
- 2年後の継続契約:18等級(事故有適用期間2年)
- 3年後の継続契約:19等級(事故有適用期間1年)
- 4年後の継続契約:20等級(事故有適用期間0年)
このケースはあくまで他に事故がないという前提ですが、このように等級と事故有適用期間が推移します。つまり3等級ダウン事故をし、1回保険使用すると元の等級・事故有適用期間0に戻るまで最低でも3年間を要するということになります。
最初に書かせていただいた記事「自動車保険金が支払われるまで」でも少しお話させていただきましたように、自動車事故での損害額によっては保険を使用されないほうがよいケースがあります。
例えば、軽微な物損事故で相手車の損害はなし、ご自身の車両も数万しかかからないということであれば、現在の等級と損害額を比較してから保険使用を検討ください。
と言いましても「保険を使用すればどの位、保険料があがるのか?」
については取扱代理店や保険会社の社員でないと分かりませんので、保険会社などに保険を使用した場合とそうでない場合の比較を3年間でシミュレーションしてもらってから保険使用されるかどうか最終的に決定されるとよいと思います。
前述で申しましたように3等級ダウン事故を一回、保険使用しますと3年間の保険料に影響してきますので次年度どのくらい保険料が上がるかだけではなく、3年間の保険料推移を確認されてから判断いただければと思います。
次にこれもよくあるケースなのですが、事故の解決、示談が終わっていない状況で次の保険の更改時を迎えることがあります。そういったケースの具体例をお話しします。
自動車保険の更新前に自動車事故を起こした場合
<具体例>
○現在15等級(事故有期間0年)
- 保険期間:2016年12月1日~2017年12月1日
- 事故日:2017年9月30日
- 契約車両:損害額 20万円
- 相手車両:損害額 10万円
- 対物事故として事故報告し現在示談交渉中
- 過失割合の見込み:契約者側20%、相手側80%
自動車保険の更改手続きはだいたい満期1ヶ月前位から更新手続きをするのですが、上記例のように更新手続きをする時点でまだ過失割合も損害も確定していないという場合は原則、一旦、等級はダウンして手続きされます。
ですからこの場合は12等級(事故有期間3年)にて2017年12月1日から契約することになります。もし保険を使用しなければ16等級(事故有期間0年)となりますので保険料の差はかなりあると思われます。
もし、更新手続き後に事故の解決、示談も完了し損害額が確定した時点で、お客さまが保険を使用しないと決断されれば、等級訂正の手続きをしてもらい差額保険料は返還してもらえます。もちろん、その場合は事故の損害額はご自身のご負担になります。
上記の例でいいますと、仮に契約者:20%、相手:80%で事故解決したのであれば、
対物補償として10万円×20%=2万円を保険金としてお支払ということになります。この2万円を保険で支払ってもらうかご自身で負担されるかを決めます。
保険会社によって保険料率は異なりますし改定もここ近年、数年置きにあるので正確な保険料は出すことはできませんが、16等級(事故有0年)→割引率50%ほど、12等級(事故有3年)→割引率20%ほどになりますので、このケースですと私が担当者であれば長い目で見た時、あまり保険使用のオススメはしないと思います。ですが最終的に保険使用するかどうか判断するのはお客さまとなります。
ちなみに今回のケースでは相手方(相手の対物賠償補償)からは20万×80%=16万円が払ってもらえます。もし契約者であるお客さまが保険を使わないということであれば、16万円から相手に対しての賠償額2万円を差し引いた14万円を相手方からいただくという方法もできます。
このような支払方法を相殺(そうさい)払いと言います。そうしますとご自身の車両についての修理費用は残りの差額6万円を負担いただくということになります。
もし、更新手続き時点でまだ示談交渉中であってもお客さまが自分は絶対に保険は使用しないので、16等級(事故有0年)で更新手続きをして欲しいと強い要望・意思がある場合には「事故有」の状況ではありますが16等級(事故有0)で更新手続きをすることもあります。
しかし示談解決できた時点でやっぱり保険を使用するということになれば、等級訂正の手続きをいただき、等級訂正後の追加保険料を徴収させていただくことになります。
事故での賠償費用が何十万、何百万となった場合は、何のための保険ということになりますので迷わず保険を使用していただいてよいのですが、軽微な損害額やお客さま側の過失割合が低く賠償額が低額の場合には取扱代理店や保険会社に相談いただき1年後、2年後、3年後の保険料がいくら位になるか調べてもらってから保険使用するかどうかの判断をしていただければと思います。
次に他社から別の保険会社へ自動車保険の切替する場合のケースについてお話します。
まず他社から別の保険会社へ切り替える場合でも、等級はちゃんと継承されますのでご安心ください。
他社から新しい保険会社の自動車保険に変える場合、等級はどうなる?
<具体例>
A保険会社で以下の契約を締結
○現在の等級17等級(事故有0年)
保険期間:2016年12月1日~2017年12月1日
B保険会社で2017年12月1日~2018年12月1日にて契約する場合、B保険会社にて18等級(事故有0年)で手続きができます。
注意点ですが、A保険会社で加入していた前契約で事故があり保険を使用されたのであれば、B保険会社にて更新切り替えの手続き際、取扱代理店や保険会社に必ず正直に申告してくださいね。
B保険会社の取扱代理店や保険会社は前契約の証券を元に見積もりを作成し保険料を算出します。
前契約の証券にはその保険期間中の事故有の有無については掲載されていませんのでもし正直に申告されなければ「事故無」として1等級進行した等級にて計算されます。
正直に申告されず、保険料の割高を避けるために事故無しで手続きをされたとしても更新手続きをしてから数カ月後に事故有であれば必ず判明します。
損害保険会社間では事故があったかどうかの情報網システムが確立されています。
きちんと正直に申告されていないと、更新手続きしてから数カ月後に、等級訂正の手続きが必要になり、正しい等級・正しい保険料で算出し、差額保険料を追加徴収させていただくということになりますのでとても面倒です。
5等級以下の自動車保険は自動車保険を放棄してから13か月間引き継がれる
ところで割引率の高い等級は継承したいものですが、割増率の高い等級は心情的には継承したくないものです。ですがたとえ低い等級でも等級継承はしなければなりません。
保険業界では5等級以下の低い等級についてはデメリット等級と呼んでいます。
4、3、2,1等級となるごとに当然、割増率が高くなります。ですが、一般的に3等級以下の契約については保険会社に引受してもらえない、もしくは条件つきの加入になる場合もあるということを頭に入れておかれるとよいでしょう。
特に1等級のお客さまの場合には保険会社にもよると思いますが一切、引受しないという会社もあります。もしくは条件付きの引受ということになります。
なぜならそこまで等級が下がっているお客さまというのは事故多発者である可能性が高いためです。もし現契約が3等級で保険期間中に3等級ダウン事故をしたとします。
もし保険を使用した場合には継続契約は1等級ということになりますので、この場合も保険を使用するかどうか慎重に検討されたほうがよいかと思います。次年度、自動車保険そのものに加入できなくなるかもしれないというリスクもあるからです。
しかし高額な損害額のため、やむを得ず保険を使用された場合、1等級になりますから次年度、引受してもらえないかもしれません。その場合は、1年以上の期間、保険には加入せず1年以上待つしかありません。
保険が切れてから13カ月以上経過すればこれまでの等級はリセットされ再び加入する際には6(S)等級からのスタートとなります。
13カ月待たない間に前契約で事故があったにも係わらず正直に申告せず6(S)等級で契約された場合でも前述でお話しましたように保険会社間の情報網システムで数カ月後に必ず判明しますので注意しましょう。
自動車保険の等級を継承できる人はだれ!?
続きまして等級継承できる被保険者の範囲についてお話します。
まず等級継承は契約者名ではなく記名被保険者ベースで継承されるということが大きなポイントになります。記名被保険者本人から本人への等級継承は当然できますが、その他、以下のご家族の範囲であれば等級継承をすることができます。
自動車保険の等級継承できる被保険者の範囲とは
- 記名被保険者
- 記名被保険者の配偶者
- 記名被保険者またはその配偶者の同居の親族
お分かりになりますように同居の親族内であれば等級継承が可能ということです。それでは具体例をお話しましょう。
契約者、記名被保険者:本人(父親) 現契約の等級20等級(事故有適用期間0年)
の自動車の契約があるとします。父親の車を息子さんに譲るため、記名被保険者名を同居の息子さんに変更したとしてもそのまま一番高い等級である20等級(事故有適用期間0年)を継承することができます。
それではもし記名被保険者である父親の別居の兄弟に車を譲るため、記名被保険者を変更する場合はどうでしょう。
もちろん記名被保険者変更手続きは問題ありませんが、等級継承はできないためこの場合、この兄弟の方は6(S)等級からということになります。
前回の記事のノンフリート多数割引についての箇所でも例をあげましたが、将来別居するということが分かっているのであれば、同居しているうちに記名被保険者変更手続きをし
て等級も継承しておくとよいでしょう。
よくあるパターンは娘さんが親の車を譲ってもらうケースです。将来、結婚して生計が別になり別居となることがあらかじめ分かっているのであれば同居しているうちに親から娘さんに記名被保険者手続きを早めにしておきましょう。
次によくあるパターンが離婚される場合です。私も実際、実務を経験しましたがもめるケースも多々あります。具体例をお話しますね。
離婚をするときに自動車保険はどうしたらいい!?
以下のように夫婦でお車を2台所有されていたとします。
【自動車:1台目】
契約者:ご主人、記名被保険者:ご主人
車の所有者名義:ご主人
現在の等級:17等級(事故有期間0年)
【自動車:2台目】
契約者:ご主人、記名被保険者:ご主人
車の所有者名義:契約者の奥様
現在の等級:20等級(事故有期間0年)
離婚されない場合は、この契約の方法で何の問題もありません。もしくは仮にこのご夫婦が別居していても法律上、離婚されていなければこの状態で問題はありません。
配偶者である以上、たとえ別居していても等級継承の被保険者範囲からはずれることはありません。しかし、このような契約のままで離婚された場合はどうなるでしょう?
ポイントは2台目、お車の所有者は奥様にもかかわらず保険の記名被保険者がご主人になっていることです。法律的に離婚が成立した場合には、この時点から配偶者ではなくなることから赤の他人になります。
つまり、等級継承ができる被保険者範囲からはずれるため、この状態だと奥様は20等級(事故有期間0年)を継承することができず、もし保険を継続されるのであれば6(S)等級からスタートとなってしまいかなりの保険料を負担するということになってしまいます。
実際、私の経験談なのですが、このような状況で離婚後、ご主人と連絡がとれなくなってしまい元配偶者である奥様は泣き寝入りせざるを得なかったというケースもありました。
つまりこのケースで言いますと、離婚が成立する前に記名被保険者名をご主人から奥様に変更手続きをします。同時に契約者名もご主人から奥様に変更手続きします。
ここで少し、契約者と記名被保険者の整理を簡単にしておきますね。一般的に契約者名は保険料を実際にお支払する人の名義にします。
そして記名被保険者名はその所有しているお車を一番よく運転する人の名前にします。この基本にそって、契約者名・記名被保険者名を設定していただくのが一番良いかと思います。
絶対に離婚はしないという硬い決心があったとしても、それぞれが所有しているお車の名義の方、一番そのお車を運転される方を記名被保険者として設定いただければと思います。
最後に
以上、自動車保険の等級別料率制度について具体例をまじえながらお話させていただきましたが、いかがでしたでしょうか?
今回お話させていただきましたのはほんの一例ですので、ご家族の人数や家庭環境、所有するお車の台数そしてお車を一時的に手放す場合など様々なケースがあります。また今後、次の機会にでもお話できればと思います。
著者の情報
- 大手損害保険会社にで保険金サービス部門や営業部門で長年勤めたあと、現在は、子供向けの英会話を中心に講師をしています。