自動車事故に示談書は必ず必要!?事故発生から自動車保険の保険金が支払われるまでをプロが解説!
投稿日:2017年6月20日
自動車保険は事故にあったときにその価値を初めて確認することができます。保険金支払いサービス部門での勤務経験から、自動車事故発生から自動車保険の保険金支払いが行われるまでの流れをわかりやすく解説します。
見出し
自動車には自賠責保険と自動車保険の2つ保険があります
自動車を所有されている方であれば、多くの方が自動車保険に加入されていると思います。一般的に自賠責保険(正式名称:自動車損害賠償責任保険)が強制保険と呼ばれているのに対して自動車保険は任意保険と呼ばれています。
自賠責保険は強制保険、自動車保険は任意保険
文字通り自賠責保険は必ず加入しないといけない保険で自動車保険に加入するかどうかは任意ということです。
「えっ?自動車保険には加入していないよ。自賠責保険加入だけではだめなの?」
という方がもし万が一いらっしゃれば、世の中のため、社会のため、そしてご自分のためにも早急に自動車保険に加入されることをオススメします。
- なぜ、自動車事故に遭遇した時、自賠責保険加入だけではカバーできないのか?
- なぜ、自動車保険の加入が必要なのか?
については追々、お話できたらと思いますがまず、自賠責保険は対相手のお怪我に関する費用しか払えません。しかも限度額があります。
任意保険は4つの基本補償がセットされている
自動車保険(任意保険)は相手に関して賠償する対物賠償、対人賠償(自賠責保険超過分のお支払)やご自身に関して補償する車両保険、人身傷害の4つの補償が基本的にセットされます。
車両保険を付帯するかどうかはお客さまの任意です。また基本補償にオプションで特約などを付帯することもできます。
自動車保険に加入していても、一生、自動車保険を使用することは一度もなかったという方も実は多くいらっしゃいます。
高い保険料ばかり払って・・と思われるかもしれませんが、自動車保険を使用することがなかったということは、
「幸いにも自動車事故に巻き込まれないで済んだということですのでそれはそれで良かった!」
と思ってくださいね。保険はあくまで万が一時のためのお守りです。
問題はその万が一の自動車事故に遭遇してしまった時です。自動車事故に遭遇してはじめて自動車保険はその効力を発揮します。事故に遭ってはじめて保険に入っていて良かったと思われるお客さまがほとんどです。
私は大手損害保険会社にほんの少し前まで勤務していましたので、自身の経験をもとにわかりやすいエピソードなども交えて、現場目線でお話しやアドバイスをしたいと思います。
是非最後までお読みください。
わっ、すごい。昔保険会社の保険金支払い部門で働いていた方のなまの声ですね!
自動車事故に遭遇し、自動車保険の保険金が支払われるまでの流れ
最初に自動車事故に遭い、自動車保険の保険金が支払われるまでの大まかな流れを説明します。
不幸にも自動車事故に遭遇しましたらお客さまはまず保険を掛けている損害保険会社に事故報告の連絡し、受付してもらいます。その後、保険会社は事故で破損した車の損害確認や怪我がある場合は症状や治療状況の確認を行います。
また事故がどのような状況だったのか、事故状況調査も同時に行います。相手がいる場合は相手(もしくは相手保険会社)へ連絡し交渉が開始されます。
損害額が決定し、相手方と示談(=双方が内容に合意すること)が完了しましたら自動車保険金をお支払するという流れになります。
と、簡単に流れを説明しましたが、早く解決する場合もあれば交渉が決裂しなかなか解決しない、ついには裁判まで発展し長引いてしまったというケースもあり解決までの時間は1事故1事故によって様々です。
自動車保険に加入していないと損害の支払はもちろんのことですがこういった相手方との示談交渉は自分でしないといけません。
自動車保険に加入していないと万が一の事故に遭った時、相手方との交渉から支払いまでこれを自分ですべてすることになります。
もし自分ですべてしなければならないとなった場合、想像以上に大変であることがこれからの説明できっとご理解いただけると思います。
最後までしっかり読んでくださいねー♪
自動車事故の現場で気をつけることとは!
生涯、自動車事故もなく保険を使用することも一度もなかったということであればよいのですが万が一、自動車事故にあった場合、どうすればよいのか?まず事故現場での対処のポイントや注意する点などをお話したいと思います。
自動車事故で怪我ないか確認をする
実際に事故に遭遇してしまうと焦ったり慌てたりされると思いますがまずは何はともあれ、双方にお怪我はなかったかどうか確認をお願いします。
自分自身のお怪我はもちろんですが、同乗者や相手方にも怪我はなかったかどうか?を確認し、重傷の怪我であれば直ちに救急車を呼びます。まずはお怪我の対応がとにかく1番の優先事項です。同時に警察へも連絡しましょう。
単独事故(自損事故)でも警察に届出をする
「ひとり相撲」いわゆる単独事故で少しご自分の車をこすった程度の事故であれば警察へ届出されるかどうかは皆さんの判断にお任せしますが、相手がいる場合はたとえ軽微な事故であったとしても、後々のことを考えて必ず警察へ届出しましょう。
自分は警察へ届出したいのに、相手方が免許の点数の関係で警察への届出を渋るケースもありますが相手がいる事故であればなおさら届出はしたほうがよいです。
警察へ届出することで後に事故証明書が発行されます。届出しなければ、事故証明書は発行されません。ただし警察は民事には介入はしません。
現場で双方に事故状況を聴取するのみで損害の確定やどちらがどのくらい過失(責任)があるかどうか?などには一切タッチしません。賠償についてはお互いの話し合いとなります。
事故相手の連絡先は忘れずに確認する
次に事故現場で、相手方に確認しておく項目を説明します。絶対に必ず確認して欲しいのは、相手方の連絡先です。電話番号それも日中連絡がとれる携帯電話などの連絡先、住所を確認します。
特にお子さんが一人で事故に遭遇してしまった時は要注意です。
私の友人の高校生の息子さんが自転車に乗っていて車と接触事故に遭ったのですが、その息子さんはその時は痛くなかったので相手には
「大丈夫です」
と伝えて相手の連絡先をきかずにその場で別れてしまいました。
後日、肩に痛みがでて結局、通院し治療費が発生したにもかかわらず相手方に請求できなかった・・というような例もありますので相手方の連絡先は必ずきくようにしましょう。
事故相手が加入している任意保険と車の情報等
現場でできるだけ相手方に確認して欲しい項目は、相手車の登録番号(ナンバー)です。そして分かれば相手方の保険会社名も確認してメモしましょう。もし相手が未成年であれば保護者の連絡先も必ず確認します。
そして自分の連絡先、登録番号(ナンバープレート)、自分のかけている保険会社名も相手方に伝えます。登録番号を訊き忘れていたとしても、警察に事故届をしておけば事故証明書に登録番号が掲載されます。やはり警察への届出は必要ですね。
まれに相手が事故現場から逃亡する?立ち去る?ケースもありますがその際は相手方の登録番号をなんとか頑張って控えてください。
車種もできるだけ確認しておくとよいでしょう。今はスマホがありますので写メで撮るのもいいかもしれません。登録番号さえ分かれば、盗難車でなければ相手を特定することができます。
事故相手と責任に関する判断はしない
事故現場で相手と話をする際に注意すべき点があります。自分の判断で、「決して相手と勝手に約束事はしないこと」です。よくあるケースが、自分のほうが事故の責任が大きいと感じてしまい、
「修理代金は全額、自分の保険で払いますので。」
と言ってしまうことがあります。
事故相手方から
- 「今回の事故は貴方のほうが悪いでしょ。だから全額、修理代金を払ってよ。」
- 「買ったばかりの新車だから新車に買い替えてよね。」
- 「事故にあったら車の価値が下がるでしょう。その分は責任とってくれるよね?」
などと、どんなに強く言われても決して約束はしないことです。賠償責任上、必ずしも相手方の要望がすべて通るとは限りません。
約束をされても賠償責任上、お支払する必要がなければ保険でお支払することはできません。約束をしてしまった場合、
「あの時、約束したはずだよね?」
と言われてしまい、交渉がスムーズにいかず長引くことがあります。
相手からたとえ強く要求されても
「事故の責任割合などについては専門の保険会社に任せるので申し訳ありませんがこの場ではお約束できません。保険会社と交渉してください。」
と言いましょう。追突や駐停車中の車に接触といった事故を除いて、双方が動いているケースでは相手方にも過失が発生する可能性がほとんどです。自分のほうの責任が大きいなあ、悪かったなあと思ったとしても安易に約束はしないようお願いします。
ただしあくまで自分の判断で「約束事」はしないということであって「お詫び」をしないということではありません。明らかに自分に非がある事故であればきちんとお詫びをしたほうが相手への印象は悪くなく交渉もスムーズにいきます。
特に相手方に怪我がある場合は、お見舞いをするなど誠意ある対応をしたほうがよいです。
事故が起きたら、まずはケガの有無を確認ね~!次におまわりさんを呼んでね♪現場でお約束ごとはしちゃだめよ~
保険会社・代理店さんへの自動車事故報告について
警察への届出も終わり、相手方の情報を確認・メモをしましたら速やかに自分の掛けている保険会社の代理店もしくは保険会社の損害調査部署(保険金支払部署)へ直接、事故報告をしましょう。
加入している代理店によって対応が異なる
代理店はプロ代理店であったり、自動車ディーラーであったり整備工場であったりと保険を掛けている代理店によって職種が様々ですが事故報告をした時、親身に今後の流れの説明がきちんとされたり、適格なアドバイスをしてくれる代理店であれば、レベル・質の高い代理店にて加入していると思ってください。
また事故現場にすぐかけつけてくれる代理店であればさらにいい代理店です。
ただし、時間や日によっては代理店が休日の場合もあります。また代理店が全く動いてくれない、今後の流れなどについて説明してくれない場合や、代理店を介さず加入している通販型などの保険会社の場合は、直接保険会社へ事故報告の連絡をします。
焦らず落ち着いて連絡ができるよう日頃から保険会社や代理店の連絡先を控えておくか携帯に番号を登録しておきましょう。
証券にも保険会社の連絡先は記載されていると思いますが、保険会社によっては事故の際にかけるフリーダイヤルなどが記載された「ドライバーズカード」などを提供している場合もありますから、免許証と一緒にしておくといいと思います。
保険会社の自動車事故の受付は24時間365日!
最近のほとんどの保険会社は365日24時間体制で事故の受付をしています。休日や夜間でもフリーダイヤルやコールセンターなどがあるはずですので、休日であってもどんなに深夜であっても、とにかく速やかに連絡しましょう。
夜間・休日でも「24時間初動対応サービス」を行っている保険会社もありますので自分がかけている保険会社もしくは代理店に確認してみましょう。
また、大きな事故や故障が原因で車が自走不能になった場合には、レッカー牽引や応急処置、燃料切れ時の給油などのサービス、いわゆるロードアシスタンスサービスがほとんどの保険会社の自動車保険商品に付帯されているはずですのでロードアシスタンス専用ダイアルに連絡しましょう。
ロードアシスタンスサービスの担当者より指示がありますのでその指示に従いレッカーで移動など行いましょう。
それでは次にお客さまが保険会社へ事故の第一報を連絡する際のポイントを少し説明します。
自動車保険の契約があるか確認してもらいます
証券番号と契約者名を伝え保険会社にご自身の契約があるかどうかの確認をしてもらいます。
万が一、証券が手元にない場合や証券が見つからない等、紛失してしまった場合は契約しているご自身のお車の登録番号(ナンバー)を伝え契約確認の依頼をしてください。
次に
- 事故日時
- 事故場所
- 運転者名
- 事故状況
を伝えます。相手がいる場合は相手方の情報も伝えましょう。
とはいえ、こちらから積極的に言わなくてもたいていの場合、保険会社の担当者から上記のような項目を順番に質問されると思いますのでそれに答えていただければよいかと思います。
事故現場での相手方の情報を確認しメモしておくことが重要になってきます。事故場所の道路状況や事故状況は過失割合(責任割合)に影響してきますので、しっかりありのままの事故状況を伝えてください。
お怪我がある場合は、病院名、それから自動車の修理先もすでに決まっているのであれば整備工場名と連絡先も伝えましょう。
自動車事故が起きた時、保険会社の初動について
保険会社に事故報告をすると当日中もしくは翌日までには専任の担当者から挨拶の連絡が入ります。保険会社ではなく仲介している代理店からの連絡の場合もあります。
多くの保険会社では、
- 対人賠償
- 人身傷害
- 搭乗者傷害
いわゆるお怪我がある場合に担当する人身担当者と
- 車両保険
- 対物賠償
いわゆる物の損害がある場合に担当する物損担当者に分かれています。
きちんと連携のとれている保険会社の担当者であれば、最初の挨拶は代表して人身担当者もしくは物損担当者のいずれかから連絡が入ります。
連携がとれていないと人身担当者、物損担当者それぞれから連絡が同じ保険会社から何度も入り少々、わずらわしいと思われるかもしれません。保険会社によっては人身も物損も一人の担当者が一連で担当する保険会社もあります。
いずれにしても保険会社の担当者から連絡が入りましたら、担当者名、担当者が所属している部署の連絡先は必ずメモしておきましょう。不明点など確認したい時や急な問い合わせをしたい場合にスムーズです。
この初動時に、事故報告時に漏れていた項目や事故状況など専任の担当者から詳細に質問されますので、まだ記憶が新しいうちに詳細な事故状況を正確に伝えましょう。事故報告の際にもお話しましたが過失割合(責任割合)に影響します。
追突事故や駐停車中の車に接触などお客さま側に100%過失があると判断された場合には保険会社の担当者からも相手方へお詫びの連絡を入れます。
そして修理先や怪我があった場合、怪我をされた部位や病院名などを確認し整備工場や病院へ担当者連絡を行い損害の状況を確認します。
もし双方に過失があると判断された場合には、物損担当者は相手も保険に加入していれば相手方保険会社へ、相手の保険会社が不明な場合もしくは保険未加入の場合、相手方へ直接連絡し相手方からも事故の状況を聴取します。
そしてお互いの自動車の修理先を確認し相手方の保険会社と情報共有し、車の損害を確認する手配をします。
通常、双方に車両保険が付いている場合はそれぞれの契約車両の損害を確認し、車両保険が付いていない場合は、お互い相手の車の損害を確認します。相手が保険未加入の場合は、契約者サイドの保険会社が両方の車の損害を確認する手配をします。
モノを壊した時と人を怪我させた時の担当者って異なるですね!
保険会社が行う自動車事故の示談交渉の内容について
保険会社の担当者は双方の事故状況の確認をした後、必要に応じて事故現場の確認をします。事故現場の道路状況も過失割合(責任割合)にも大きく影響します。
- 信号のある交差点なのかどうか?
- 信号の色は何秒で次の色に変わるか?
- 道路幅はどちらが広い・狭いか?
- センターラインはあるかどうか?
- 優先道路はどちらなのか?
- 一旦停止の標識はあるかどうか?
- 見通しは?交通量は?制限速度は?
等について、詳しく事故現場の確認をします。事故後まもなくであれば
- ブレーキ痕なども残っていないかどうか?
等も確認します。それから事故車両の損害も同時並行で確認します。修理をする予定の整備工場やディーラーに損害箇所を確認し
- 事故状況と整合性があっているかどうか?
- 修理するとなれば概算でどの位の費用がかかるかどうか?
について確認し、損害がひどく高額な修理代がかかりそうな場合や修理不可能な場合いわゆる全損状況と判断されれば整備工場へ立会に行きます。
技術アジャスター(通称アジャスターさん)が整備工場で損害額査定
ほとんどの保険会社には整備士の資格を持った「技術アジャスター」と呼ばれる専門の担当者がいて車両損害の確認や整備工場と損害額の協定をします。
損害状況によっては写真やデジカメで画像を送信してもらい保険会社社内で損害の確認をします。効率面も考慮し、近年ほとんど多くは画像で損害を確認している状況です。
相手が車の場合はこのような流れになりますが、自動車事故は相手が車だけとは限りません。
例えば、民家に車が突っ込んだ、コンビニに車が逆走して突っ込んできた・・・といったような事故もニュースなどで耳にされたことはないでしょうか。この場合も対物賠償の対象となりますので、建物や商品の損害を確認します。
建物や商品などの損害は、保険会社の火災・新種保険部門所属の専門の担当者が確認し、高額な商品や希少価値のある物など判定が難しい場合には保険会社が委託している民間の鑑定会社に調査依頼し損害の確認することもあります。
私が住んでいる街は市電が通っており、市電と衝突した!という事故もありました。これももちろん対物賠償の対象となります。犬や猫などのペットに衝突・接触し、動物病院で治療費がかかった!という場合も対物賠償の対象となります。
また相手が歩行者だったり自転車に乗っていたりという事故もあります。バスに乗車中にバスが急ブレーキを踏んだために車内で転んで怪我をしてしまった等の事故もあります。
このような場合は、対人賠償の対象となりますので人身担当者が対応します。
判例タイムズを活用した過失割合の算出
さて車対車の事故に戻りますが、双方の事故状況、現場状況、損害状況を確認した後、責任割合を相手方(相手方保険会社)と交渉していきます。
責任割合については各社とも通常、「判例タイムズ」と呼ばれる冊子を常備しておりこちらを参考に契約者であるお客さまや相手方(相手保険会社含)と交渉の話をします。
「判例タイムズ」というのは簡単に言いますと過去の交通事故の裁判例を元に事故状況別に過失割合(責任割合)が掲載されています。
例えば、信号のない交差点で直進車と右折車が衝突した場合は直進車70%:右折車30%というような基本割合が掲載されています。さらに基本割合に加えてスピードや合図の有無、信号の色などプラスマイナスの修正要素も掲載されています。
その後、保険会社の担当者から進捗状況の連絡が中間報告として連絡が入ってくるはずなのでどのように話が進んでいるか状況を確認ください。
過失割合についてもその根拠などの説明が保険会社担当者からありますので、お客さま、相手双方がその過失割合に了承し、損害額も確定すれば示談解決という運びになります。
過失割合がまとまらない場合は調査会社への依頼や現場立会もある
事故状況も一致しておりお互い納得できていればスムーズに迅速に事故解決ということになり安心なのですが、双方の主張に食い違いがあったり、事故状況は双方一致しているのにものかかわらず過失割合にそのものに納得できないということになると、少々やっかいな展開になり長引く可能性がでてきます。
その場合、公平に判断するため民間の第3者のリサーチ会社(調査会社)等へ事故状況調査を依頼する場合もあります。その際は調査会社から直接お客さまに連絡が入り再度事故状況について聴取されます。
何度も何度も事故状況の説明は面倒と思われるかもしれませんが、その場合はご協力いただければと思います。それでも解決しない場合は保険会社担当者立会のもと双方話し合いをするというケースもあります。
さらにそれでも決着がつかない場合は、少額訴訟や裁判にまで発展するケースもあります。ですが、どんな展開になったとしても、どんなに長引いたとしても保険会社の担当者は進捗状況を契約者であるお客様に報告をします。
膠着状況になってしまい前になかなか進まないと長らく放置してしまう担当者もいますから、もし担当者からの連絡があまりにもないようであればご面倒ですが、担当者に督促の連絡をしたほうがいいでしょう。
人身と物損ではお怪我の状態や過失交渉の進み具合によって進捗状況が異なりますので、それぞれの担当者から中間報告の連絡が入ってきます。この間、請求書などの必要書類も届く時期でもありますので中身を確認して必要に応じて返送しましょう。
過失割合について知りたくなったら、判例タイムズを買うといいわよ~
過失割合の合意し示談交渉が終了!最後は保険金支払い
こじれていても長引いてもいつかは解決する日が必ずやってきます。ただし、損害が高額な場合や後遺障害が残るような重度な怪我の場合は、相当な時間がかかりますので覚悟が必要です。
物損の場合、示談交渉と同時並行で前述にてお話ししました「技術アジャスター」と呼ばれる保険会社の専門担当者が修理工場と修理代金について協定し、損害額が確定します。
修理不可能の場合や修理金額が現時点の車の価値(時価額)を上回る場合は全損という扱いになり車両であれば保険金限度額、対物であれば時価額を限度に損害額が確定します。
追突事故のようにお客さまが100%責任ある事故であれば、上記範囲内で全額、保険金として支払われます。
双方に過失がある場合は、損害額に責任割合をかけた金額が保険金として支払いされます。例えば過失割合が契約者70%:相手30%の場合は、相手車の損害額×70%がお客さまの対物賠償の保険金として支払われます。
契約車両については契約車の損害額×30%が、相手方保険会社より対物保険金として支払われます。お客さまが車両保険をつけていれば、相手(相手保険)から賠償してもらえなかった残り30%分を車両保険でカバーできます。
示談は電話で終わる場合もあれば示談書の取り交わしをする場合もある
示談方法は、双方に了解をとり電話で示談完了するケース、書類を取り交わし捺印を取り付けし示談完了するケース等があります。電話のみで示談完了だと不安と思われるお客さまもいらっしゃるかもしれませんが賠償責任上、特に問題はありません。
でもどうしても相手の捺印の入った書類の控えがないと安心できないと思われるのであれば、そういった要望を保険会社へお伝えください。
最後に保険を使わないという判断をしても構わない!
それから最後にお客さまが決めないといけない事があります。それは最終的に保険を使用するかどうかです。
過失割合、損害額が決まると保険会社の担当者からお客さまに「保険金としてお支払いする金額」の連絡があり
「保険を使用しますか?それとも自己負担されますか?」
という確認の連絡があります。保険を使用しますと次年度の保険料が上がります。どの位保険料が上がるかは、現在の等級が何等級なのか?により割増・割引率が変わってきます。
皆さんは現在のご自分の等級が何等級であるかご存じですか?証券に記載されているはずですので確認してみてください。ほとんどの保険会社では等級は1~20等級となっています。※全労済は22等級まであります。
その場合、1等級の割増率が1番高く20等級の割引率が1番高くなります。通常、保険を使用しますと等級は3等級ダウンします。(契約車両のフロントガラス破損といった事故など状況によっては1等級ダウンの場合もあります。)
例えば現在、15等級で3等級ダウン事故により保険を使用した場合、次年度更改手続きまでに他に事故がないケースだとしますと次年度は12等級となります。次年度以降、無事故であればまた等級は1年ごとに1等級ずつ進行します。
つまり元の等級に戻るまで3年かかります。
例えば保険金として支払う金額が2万円ですが、保険を使用すると次年度4万円もアップするとなると保険は使用せず自己負担されるほうがいいと考えられます。
保険を使用するかどうか迷った場合には、担当者に保険を使用した場合と使用しない場合との差額保険料をシミュレーションしてもらいましょう。たいてい3年間の差額保険料で試算してくれるはずです。
種目やケースによっては保険を使用してもカウントされないケースがあります。この場合、ノーカウント事故といい等級は下がりません。
例えば、ロードアシスタンスサービスや人身傷害のみを保険使用の場合や、自賠責保険内で示談解決できた等の場合はカウントされません。
ケースケースによって様々ですので、詳細は保険会社担当者に確認していただいた上で、保険を使用するかどうかお客さま自身が最終的に判断、決定ください。
保険を使用することの意思表示、場合によっては請求書類を提出し、受理されればようやく自動車保険金として保険会社から支払われます。
後日、保険金お支払の案内と示談書などの控えが送付されこれにて解決ということになります。
示談書って必ず取り交わす必要がないっていうこと、初めて知りましたー!
最後に
以上、自動車保険金がお支払されるまでの道のりについてお話させていただきましたがいかがでしたでしょうか?自動車事故に遭遇して初めて多くの方が保険のありがたみを感じます。
なぜなら、保険は万が一の時に金銭的にも精神的にも助けてくれ、お客さまの不安をやわらげてくれるからです。
自動車保険を契約する際に、保険金をお支払することができない場合など保険会社とお客さまとの間の約束事や規定などが記載された「約款」(やっかん)という冊子がもらえます。
「約款」、聞き慣れない難しい言葉ですね。「約款」=「ご契約のしおり」と思ってください。
中身を見ていただくと分かるのですが複雑な言い回しやかなり小さな文字で書かれています。契約された時にこれをきちんと読まれる人がどれだけいるでしょうか?
ほとんどの人が「約款」を契約時に読むことはまずありません。仮に事故が起こった時でさえもこれを読んで理解するのはなかなか困難です。
ですからやはり事故があった時には自動車保険のプロフェッショナルである保険会社の担当者に連絡・相談し、事故の解決へと導いてもらうのが1番です。
自動車保険の基本補償はほとんどの保険会社ともほぼ同じなのですが、保険会社間で競争もあり保険会社オリジナルのサービスやオプションで付帯できる特約などもあります。
そのサービスの違いもあること等から同じ補償条件にも係わらず保険料に差があることもありますので保険料だけでなく各社サービスの違いや事故対応体制などをよく比較されて保険会社を選択されるとよいでしょう!
著者の情報
- 大手損害保険会社にで保険金サービス部門や営業部門で長年勤めたあと、現在は、子供向けの英会話を中心に講師をしています。